バン!
大勢のランナーと共にボクはスタートを切った。
スタートから1キロは下り坂。
沿道には沢山の人たちが立ち、応援してくれている。
そんな祭りの様な雰囲気の中、少し興奮しながら、でもマイペースを保つ様に心がけながら、ボクは走り出した。
前半は無理しないように体力温存・・・とスローペースで走っていたら、次々と追い越していく老若男女のランナーたち。
気にしない気にしない。
その後、折り返し地点までは上り坂中心。
少し平坦、上り上り、一瞬平坦、上り上り・・・八ヶ岳山麓の高原コースは高低差100M以上もある。
正直、素人が初めて挑むコースではない。
その苛酷さに気付いてしまったのは、10キロコースの折り返し地点。
あれ?
20キロって思っていた以上に長いんですね・・・
やばい?
でも往路が上り坂で大変な分、下り中心の復路は楽なはず。
そう信じて止まないボク。
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まるで人生を凝縮したかの様なコースだった。
10代や20代前半の頃、ボクは自分自身を理解し、受け入れるコトが出来ず、人生にもがき苦しんだ。
先が見えず、ただただ坂を上っていた気がする。
でもそのおかげで、下り坂とまではいかないけれど、30代になった今のボクは肩の力が抜け、自然体で生きていけている。
青空の下、優しく吹きかかる高原の風。
無数に植えられた緑の高原野菜、風に揺れる黄金の稲穂。
下り坂中心の往路は、周囲を見渡す余裕もあった。
マラソンって最高だ。
走るって美しい。
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・・・なんて書こうと思いながら、上り坂中心の往路をひたすら頑張っていたボク。
折り返し地点までは、ボスと壮絶なデッドヒートを繰り返した。
「3キロ走ったら歩く」とか出発前に口にしていたくせに、彼はほぼボクと同じペースで走り続け、2回、追い抜かれた。
彼だけには負けたくない、という思いでボクは必死に走った。
背後に迫るボスの存在におびえ続け、復路の下り坂では、膝が少しずつ痛くなってきた。
膝なんて痛くなる予定は全くなかったのに。
一度、違和感を覚えた膝、あとは痛くなっていくばかり。
復路、特に最後の5キロは、膝の痛みとの闘いだった。
2キロ増えた体重が膝にダメージを与え続ける。
周囲を見渡す余裕があるはずだったのに、痛くてそれどころじゃない。
全身は限界まで疲労し、無駄なコトをする元気は残っていなかった。
マラソンって最高だ。
走るって美しい。
それは、ある程度、練習を積んだランナーのみが語れる感想なんだろう。
そんなコトを想う余裕、ボクには、これっぽっちもなかった。
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入念なシュミレーションを繰り返して挑んだ、人生初の「給水所」。
なんてコトもない。
数キロ毎に設置された「給水所」は、ただただ有難い場所だった。
メタボとか乳首バンソーコーとか、そんなコトを指摘する雰囲気なんて、もちろんない。
歩いてコップに入った水をもらい、飲んだりうがいしたり。
スピードやタイムとは無縁のボクにとって、「給水所」はまるでオアシス。
ボランティアのおじさん、おばさんが迎え、励ましてくれる「給水所」のおかげで、ボクは何度も復活し、ゴールを目指すコトができた。
本当に感謝だ。
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最後の5キロは本当にしんどかった。
疲れと痛みで意識は朦朧とし、でもボスには勝ちたい、立ち止まりたくない、そんな思いだけで、ボクはゴールを目指した。
あれ?
なんで走ってるんだっけ?
何度もそう自分に質問しながら。
最後の1キロ、ゴールまでの上り坂。
既に走り終えて歩いて下ってくるランナー、そして沿道の人たちが、ゴリラの様な表情でフラフラと前に進むボクに声援を送ってくれる。
あと少し!
ナイスランです!
全然ナイスランなんかじゃないボクに、そう声をかけてくれるどっかの陸上部員。
純粋に嬉しかった。
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ゴール手前、ボクの少し前を走っていた男性の元に、旗を持って駆け寄ってくる二人の女の子。
旗には「お父さん、がんばって」と書かれている。
娘二人と共にゴールする親父の姿を見て、妄想が膨らむボク。
そらちゃん、コウくんの成長した姿を、ボクは、目の前の女の子二人に重ね合わせ、泣きそうになった。
そして・・・ゴール!!!
随分前に走り終えたクボクンが、嬉しそうに待っていてくれた。
待っていてくれる人がいるって、何て素晴らしいんだろう。
一見孤独に思えるマラソンって、応援してくれる人、待っていてくれる人がいるから苦しみに耐えられるんだろう。
一人旅だってそう。
世界の果てで、どんなに寂しい想いをした時も、日本で待っていてくれる人がいたから旅を続けられた。
沢山の人に支えられて生きてきた33年間を、ボクは少し思い返していた。
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その後、2分遅れでゴールしたボスを、クボクンと二人で迎え入れた。
大学卒業後、「不健康なオッサン×3」に向けて、着々と歩んでいたボクたち。
クボクンが一足先に、そんな不健康人生から抜け出し、そんな姿に刺激を受けた二人。
半年前、「ハーフマラソンに出よう」と誓い合った。
思っていたよりずっとしんどくて、ゴールした時、足はフラフラ、今にも吐きそうだった。
それでも素人ながらに練習を重ね、当日を迎え、走りきったコトに意義がある。
なんてステキな体験、そして瞬間だったんだろう。
30歳を超えて、新たな挑戦をするコト。
確かに甘くはないけれど、苦労しただけの味わいもある。
何より、こんな体験が出来たコト、ボクは幸せに想う。
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その夜、三人は、松本の駅前で夕方五時から飲んだ、食べた、そして飲んだ。
我慢していたから・・・と肉を、揚げ物を、食べまくった。
散々食べて飲んだ後、ラーメンも食べた。
結果、翌朝には、走る前より更に1キロ増えていたボクの体重。
足の裏の痛みが無くなったらまた走らなきゃな・・・
とりあえず体重を落とさないと、膝が死ぬほど痛くなるコトを学んだボク、そしてボスだった(^_^;)。
ちなみに記録は、2時間13分2秒で109位。
何となく2時間半、何より「完走」を目標にしていたボクには大満足の数字。
よく頑張りました~♪
そうそう、バンソーコーの効果なのか、乳首は無傷です(*^_^*)
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