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2008/06/24

感謝状

あの夜から一週間近く経った。

川を挟んでいるとはいえ、家の真向かいが轟々と燃えていたら、さすがに見てみぬふりは出来ない。

きっと誰だって、慌てふためきながらも、同じように、通報していたに違いない。

同じように、何とかして近所の人たちに知らせて回ったに違いない。

別に、誰かに感謝されたかったり、誰かに自慢したかった訳じゃない。

無我夢中で走って、叫んだ。

格好良く言えば、人として当たり前のコトをしただけ。

だから、別に感謝状なんて欲しくはない。

でも・・・

火災の被害を最小限に食い止めたコトは事実。

ボクの通報が数分遅れていたらどうなっていたんだろう…とも思う。

職場では色んな人に質問され、同じ話を何度もした。

「感謝状もらえるかもねぇ」って何人かに言われた。

確かに人生で何度も遭遇する場面ではない。

逆にこれから先、ボクが被災者になったり、逆にボクの過失で他人に迷惑をかけてしまうコトだってあり得る。

今回は、偶然が重なって、ボクが救う立場になった。

ただ、それだけのコト。

だけども・・・せっかくだし、感謝の気持ちを形にしてくれると言うのなら、遠慮なく受け取るべきだろう。

新聞やテレビなどで、見知らぬ人が感謝状を受け取る姿を見たコトがある。

そんな無名のヒーローたちを、ボクは他人事と思いつつも、どこか「尊敬」していた。

まさか、自分がそんな立場になるなんて思いもせず。

感謝状を受け取る時は、普段着でなく、スーツで行くべきだろうか。

新聞記者が取材に来たりするんだろうか。

怪我人も出ず、被害が最小限に収まったコトが嬉しいです」。

挨拶の一言はこれに決まりだ。

色々考えると、やはり何だか照れくさい。

火災から数日の間、気がつくとそんなコトを考えていた。

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そしたら、ついに消防署から連絡があった。

消防署に出向き、「状況報告書」の内容を確認して、サインした。

この度はごくろうさまでした

・・・終了。

ありゃ・・・。

心配や妄想は全く無用に終わった。

まぁそんなもんだろう。

火の中に飛び込んで誰かを救っていたら、感謝状の一枚くらいあったのかもしれない。

でも、きっとボクにはそこまでの勇気はない。

自分の命が何より大事なちっぽけな男だ。

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対岸では、業者がアパートの片付けをしている。

古い木造アパートだし、きっと取り壊されるに違いない。

今回は、火の不始末での火事らしい。

火災保険には入っていたんだろうか。

その他、諸費用など、どうなるんだろうか。

周囲の人たちは、何事もなかったかの様に、「日常」に戻っている。

「普通」の生活を「普通」に送っている。

時が経てば、火事のコトなんて皆の記憶から消えていくに違いない。

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Conv200806240001梅雨の合間、青空の下、そこに一部が焼けたアパート。

川の音に混ざって、作業中のおじさんたちのおしゃべりが聞こえてくる。

洗濯物がユラユラと風に吹かれている。

今日は天気が良いから、洗濯物もしっかり乾くだろう。

不謹慎だけど、いつも通り、何だかのどかなこの風景。

のどかな風景、のどかな時間、のどかな気持ち・・・。

そんなのどかな日常の中に、ボクはいる。

目の前にある当たり前の「のどかさ」に幸せを感じるコト。

ちっぽけでも、そんなコトの大切さに気付ける男でいたいものだ。

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